当記事では、Core i9-11900Kの性能スペック及びベンチマークについて紹介しています。Core i9-10900Kの後継モデルです。Intel第十一世代(Rocket Lake)のフラグシップモデルが登場しました。競合モデルは第四世代RyzenシリーズのRyzen 9 5900Xです。マルチスレッド性能の高いCPUとなっています。
これまで最新=最良と考えていましたが、Core i9-11900Kについては期待はずれと言わざるを得ません。その理由はスペックダウンによって前世代のCore i9-10900Kよりもマルチスレッド性能が低いことと消費電力が高すぎることです。10コア20スレッドから8コア16スレッドへとスペックが引き下げられてしまいました。もちろんCPUコアが変わり性能は向上していますが、動画編集などの作業では不利になります。
買い替えを検討中の方は次世代モデルを待つか下位モデルの購入を検討した方が良いかもしれません。後継モデルはAlder Lake世代の「Core i9-12900K」です。16コア24スレッドと一気にスペックアップが図られていてフラグシップモデルにふさわしいモデルとなっています。
(+) 最新のRocket Lake世代のフラグシップモデル
(+) Adaptive Boost Technologyに対応している
(+) CPU内蔵グラフィックスの性能が向上している
(-) 8コア16スレッドと33%ダウン
(-) Core i9-10900Kとの性能差が小さい
(-) 消費電力が大きくなりすぎている
Core i9-11900Kの基本スペック
世代 | 第11世代 |
アーキテクチャ | Rocket Lake |
コア/スレッド数 | 8 / 16 |
クロック周波数 | 3.50 GHz |
ブーストクロック | 5.30 GHz |
内蔵グラフィックス | UHD Graphics 750 |
L3キャッシュ | 16MB |
TDP | 125W |
発売日 | 2021年03月30日 |
価格 | $539 |
目次
Core i9-11900Kのおすすめ用途
デュアル | 動画視聴 | 動画編集 | 動画投稿 | RAW現像 | マンガ | ゲーム |
☆ | ☆ | ◎ | ◎ | ☆ | ☆ | ☆ |
デイトレ | 実況 | デザイン | DTM | Skype | CAD | ビジネス |
☆ | ◎ | ☆ | ☆ | ☆ | ◎ | ☆ |
Core i9-11900Kのスペック比較
Intel製CPUと比較
i9-11900K | i9-11900 | i9-10900K | |
---|---|---|---|
コードネーム | Rocket Lake | Rocket Lake | Comet Lake |
プロセス | 14nm | 14nm | 14nm |
コア/スレッド | 8/16 | 8/16 | 10/20 |
ベースクロック | 3.5GHz | 2.5GHz | 3.7GHz |
最大ブーストクロック | 5.3Ghz | 5.2Ghz | 5.3GHz |
Turbo Boost 2.0 | 5.1GHz | 5.0GHz | 5.1GHz |
Adaptive Boost | 5.1GHz | - | - |
Turbo Boost Max 3.0 | 5.2GHz | 5.1GHz | 5.2GHz |
Thermal Velocity Boost | 5.2GHz | 5.2Ghz | 5.3GHz |
オーバークロック | ◯ | × | ◯ |
L3キャッシュ | 16MB | 16MB | 20MB |
CPU内蔵グラフィックス | UHD Graphics 750 | UHD Graphics 750 | UHD Graphics 630 |
メモリタイプ | DDR4-3200 | DDR4-3200 | DDR4-2933 |
最大メモリ幅 | 50.0 GB/s | 50.0 GB/s | 45.8 GB/s |
TDP | 125W | 65W | 125W |
価格 (実売価格) | $539 | $439 | $488 (70,000円) |
発売日 | 2021年3月30日 | 2021年3月30日 | 2020年5月20日 |
同様にベースクロックについても3.7GHzから3.5GHzへと5%引き下げられています。一方で、最大ブーストクロックについては同じ5.3GHzです。Core i9-11900Kでは新しいブーストテクノロジーとしてAdaptive Boostが搭載されています。これによって複数コアに負荷が掛かっている状態でも最大5.1GHzまでクロック周波数を引き上げることができます。オーバークロックにも対応しています。L3キャッシュは、1コア当たり2MBとなりますので、合計16MBです。10コアだったCore i9-10900Kよりも4MB減少しています。
CPU内蔵グラフィックスはUHD Graphics 750にアップグレードされました。48つの実行ユニットを持っています。グラフィックス性能はUHD 630よりも最大50%向上(インテル ニュースルーム, 2021)しています。メモリ規格はDDR4-3200になりました。消費電力は同じ125Wです。価格は$539とCore i9-10900Kよりも$51高いです。
下位モデルのCore i9-11900と比較していきます。コア/スレッドは同じ8コア16スレッドです。最大の違いはクロック周波数でしょう。Core i9-11900ではベースクロックが2.5GHzとCore i9-11900Kよりも28%抑えられています。最大ブーストは0.1GHz低いです。Adaptive Boostに対応していないのもポイントですね。マルチコアに負荷が掛かる場面での性能差は大きいです。無印モデルのためオーバークロックには対応しています。L3キャッシュは同じ16MBです。消費電力は、クロック周波数が抑えられている分65Wと省電力性が高いです。価格差は$100で$439となっています。
AMD製CPUと比較
i9-11900K | 9 5900X | |
---|---|---|
コードネーム | Rocket Lake | Zen 3 |
プロセス | 14nm | 7nm |
コア/スレッド | 8/16 | 12/24 |
ベースクロック | 3.5GHz | 3.7GHz |
最大ブーストクロック | 5.3Ghz | 4.8Ghz |
オーバークロック | ◯ | ◯ |
L3キャッシュ | 16MB | 64MB |
CPU内蔵グラフィックス | UHD Graphics 750 | 非搭載 |
メモリタイプ | DDR4-3200 | DDR4-3200 |
最大メモリ幅 | 50.0 GB/s | - |
TDP | 125W | 105W |
CPUクーラー | × | × |
価格 (実売価格) | $539 | $549 |
発売日 | 2021年3月30日 | 2020年11月5日 |
Ryzen 9 5900Xは、12コア24スレッドとそれぞれ50%多くなっています。スペック的には完敗ですね。これが性能面でどのような差が生まれるのかが注目ポイントです。ベースクロックはRyzen 9 5900Xの方が6%高く、最大ブーストクロックはCore i9-11900Kの方が11%高いです。いずれのCPUもオーバークロックに対応しているので環境さえ整えばより高いクロック周波数を目指すこともできます。L3キャッシュはRyzen 9 5900Xが64MBとCore i9-11900Kの4倍です。
Ryzen 9 5900XにはCPU内蔵グラフィックスが搭載されていません。この点においては、Core i9-11900Kにエッジがあります。TDPは、105WとCore i9-11900Kよりも15%程度省電力です。スペックの差を考えるとRyzen 9 5900Xの省電力性の高さが浮き彫りになります。価格差は$10でRyzen 9 5900Xの方が僅かに高くなっています。
Core i9-11900KってどんなCPUなの?
Adaptive Boost対応でCPU性能が高い
出典:https://wccftech.com/
Core i9-11900Kの最大の特徴は、このAdaptive Boost Technologyに対応していることでしょう。同じ8コア16スレッドの下位モデルであるCore i7-11700Kとの差別化に繋がる機能です。5つ以上のコアに負荷が掛かっている場合に有効化されます。マルチスレッド性能を高められる機能ということです。Core i9-11900Kの定格クロック周波数は3.5GHzで、最大ブーストクロックは5.3GHzとなっています。5.3GHzに到達できるのは2コアまでです。
全てのコアに負荷が掛かっている場合、Turbo Boost 2.0で4.7GHzまで引き上げることができます。次にThermal Veliocity Boostでは冷却システムに余力がある状態であれば4.8GHzまで高くなります。最後にAdaptive Boost Technologyは、消費電力・温度・冷却システムの限界に達していない場合及びマザーボードのVPU VRAMの効率性が担保されている場合に5.1GHzまで引き上げることができます。
IPC改善と相まってより高いCPU性能を発揮できるというわけです。前世代のCore i9-10900Kよりもコア/スレッドが33%少なくなっても問題がありません。IntelはこのAdaptive Boost Technologyに自信を持っているのです。Core i7-11700KではなくCore i9-11900Kを選ぶのもこのクロック周波数の高さが理由になります。
消費電力が大きくパワー効率が悪い
Core i9-11900Kの弱点は消費電力の大きさです。上記のテーブルを見ると分かる通り他のCPUと比べてもずば抜けて消費電力が大きくなっています。通常時でもRyzen 9 5900Xと比べて40%以上も大きく、Adaptive Boost有効時は230%増です。前世代のCore i9-10900Kと比べても9%大きくなっています。7nmプロセスを採用しているRyzenシリーズの省電力性の高さが光りますね。
いくらAdaptive Boost Technologyの恩恵でクロック周波数が高くなったといってもこれだけ消費電力を犠牲にしていると厳しいですね。Intelが長年採用している14nmプロセスの限界とも言えるかもしれません。電源ユニットやPCケースにはこだわった方が良いでしょう。BTOメーカーが販売しているモデルであれば一定の基準は超えているので問題ありませんが、自作を考えている方は注意が必要です。
Ryzen 9 5900Xと比べるとコスパで劣る
Core i9-11900Kは性能の高いCPUであることは疑いの余地はありませんが、コストパフォーマンスを考えると魅力に乏しいCPUだと言えます。上記に各CPUの価格と総合性能及びゲーム性能とをまとめている表をまとめています。Core i9-11900Kよりも$10出せば総合性能が35%も高くなり、おおよそ同等のゲーム性能を持つRyzen 9 5900Xが選択肢に入ります。
Adaptive Boostを使用しないのであれば$90安いRyzen 7 5800Xが手に入ります。総合性能は10%高く、ゲーム性能は同等です。今後Core i9-11900Kの価格が引き下げらないと立場が危ういのではないかと思います。
機能面の強化が行われている(共通)
Intel第11世代CPU全体で共通の機能面の強化が行われています。簡単に見ていきましょう。
Intel Xe Graphics
まず一番大きいところでいうとCPU内蔵グラフィックスの強化が挙げられます。型番もUHD 630からUDH 750へと変わりました。最新のGen 12 Xe LPグラフィックスアーキテクチャに基づいています。Tiger Lake世代(モバイル)のiGPUと同じテクノロジーですが、少しだけ異なるところがあります。
Tiger Lake世代のiGPUでは96の実行ユニットが搭載されていますが、Rocket Lake世代のiGPUでは僅か48の実行ユニットとなっています。これはおそらく14nmダイのスペースに余裕を持たせるためでしょう。この実行ユニットが少ない分は、より高いグラフィックス周波数を引き上げることでカバーしています。消費電力でも15ワットのTiger Lake世代のチップに比べると有利です。
Intelによると、Rocket Lake世代の内蔵グラフィックスは、Comet Lake世代のGen 9.5のモデルよりもおおよそ50%高い(インテル ニュースルーム, 2021)ということです。さらに、10 bit AV1や12 bit HEVCビデオフォーマットでのハードウェアアクセラレーションを強化しています。
PCI-Express 4.0
第11世代になってついにPCI-Express 4.0に対応しました。ストレージやグラフィックボードを搭載すればより性能を高められるというメリットがあります。消費電力が高くなりますが、それ以上のメリットがあると言えます。AMDではいち早く採用されていましたね。
AVX-512
新しいAVX-512という命令セットが搭載しています。科学的シミュレーション、財務分析、人工知能・ディープラーニング、3Dモデリング、動画編集・画像編集、データ圧縮などの用途でパフォーマンスを向上させることができます。CPU性能の高いCore i9-11900Kにとって魅力的ですね。
Core i9-11900Kのベンチマーク
Cinebench R23
一方で、シングルスレッド性能についてはトップクラスです。Ryzen 9 5900Xよりも3%程度高く、Core i9-10900Kよりも23%高くなっています。なお、Adaptive Boostを無効化した方がシングルスレッド性能は高くなりますね。Thermal Velocity Boostが力を発揮するのだと思います。
画像編集
動画編集
動画エンコード
Zipファイル
圧縮速度でもRyzen 7 5800XやCore i9-10900Kに劣ります。性能差はそれぞれ7%-9%です。CPUコア/スレッド数の多いCPUが有利です。また、Adaptive BoostをOFFにするとONのときよりも最大10%程度低くなります。かなり苦戦しています。
Core i9-11900Kのゲーミング性能
Borderlands 3
Far Cry 5
Metro Exodus
Core i9-11900K搭載のおすすめBTOパソコン
SR-ii9-8975T/S7/W10P/LW(セブン)
価格:186,780円(税込)
CPU:Core i9-11900K
GPU:CPU内蔵グラフィックス
メモリ:DDR4 32GB
SSD:500GB NVMe
HDD:非搭載
G-GEAR GA9J-J211/ZT(TSUKUMO)
価格:299,800円(税込)
CPU:Core i9-11900K
GPU:GeForce RTX 3070
メモリ:DDR4 32GB
SSD:1TB NVMe
HDD:非搭載
GALLERIA ZA9C-R38(ドスパラ)
価格:299,979円(税込)
CPU:Core i9-11900K
GPU:GeForce RTX 3080
メモリ:DDR4 16GB
SSD:1TB NVMe
HDD:非搭載
当記事のまとめ
当記事では、Intel第11世代のフラグシップモデルであるCore i9-11900Kの性能スペック及び搭載BTOパソコンについて紹介しました。Core i9-11900Kは、従来モデルのCore i9-10900Kよりもコア/スレッドがダウンしています。世代が変わってのスペックダウンは異例です。
それでもIPCの改善によって8コア16スレッドでも10コア20スレッドを超えるCPU性能を誇っています。Adaptive Boost Technologyによるクロック周波数の引き上げも性能アップに貢献しています。動画編集などコアが有利に働く用途では競合のRyzen 9 5900Xに劣ってしまっていますので、用途を考えて選択するのが望ましいです。
性能引き上げの代償として、消費電力が大きくなっているのがデメリットです。Ryzen 9 5900XやCore i9-10900Kを大きく超える消費電力はネックとなってしまうでしょう。当然熱にも注意しなければいけません。Core i9-11900K搭載モデルを購入される際は電源ユニットの強化やできるだけ大きいケースの選択が重要になってくるでしょう。
出典一覧
- 第11世代 インテル® Core™ プロセッサー 圧倒的なオーバークロック性能・ゲーム性能を実現; インテル ニュースルーム(インテル ニュースルーム, 2021)
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