当記事では、「Ryzen 5 3550Hの性能スペックとベンチマーク」を紹介しています。第二世代モバイル向けRyzenシリーズです。前世代のRyzen 5 2600Hと比べて性能が高くなったことはもちろんゲーマーに対して認知度も高くなりマーケティングに成功したと言えます。
対抗モデルとしては、IntelのCore i5-9300Hが挙げられます。このCore i5-9300H及びRyzen 5 3550Hの上位モデルであるRyzen 7 3750Hと比較しながら検証していきます。後継モデルは、Zen 2アーキテクチャを採用した「Ryzen 5 4600H」です。より洗練されたモデルになってパフォーマンスが向上しています。
Ryzen 5 3550Hの基本スペック
世代 | 第2世代 |
開発コード | Zen + |
コア/スレッド数 | 4 / 8 |
クロック周波数 | 2.10 GHz |
ブーストクロック | 3.70 GHz |
内蔵グラフィックス | RX Vega 8 Graphics |
TDP | 35W |
発売日 | 2019年1月7日 |
価格 | - |
目次
Ryzen 5 3550Hのおすすめ用途
デュアル | 動画視聴 | 動画編集 | 動画投稿 | RAW現像 | マンガ | ゲーム |
☆ | ☆ | △ | △ | ◯ | ◯ | △ |
デイトレ | 実況 | デザイン | DTM | Skype | CAD | ビジネス |
◯ | △ | ◯ | △ | ☆ | △ | ◯ |
動画編集にもある程度対応できますが、4K解像度の編集など負荷が大きくなるとカクツキが生じる可能性があります。動画編集・ゲーム実況・DTM・CADなどになるとRyzen 7 3750HあるいはCore i7-9750H搭載モデルを選択するべきです。Zen +アーキテクチャの限界だと言えますね。
Ryzen 5 3550Hのスペック比較
AMD製CPUと比較
Ryzen 5 3550H | Ryzen 7 3750H | Ryzen 5 2600H | |
---|---|---|---|
コードネーム | Zen + | Zen + | Zen |
プロセス | 12nm | 12nm | 14nm |
トランジスタ数 | 49.4億 | 49.4億 | - |
ダイサイズ | 210 mm² | 210 mm² | 246 mm² |
コア/スレッド | 4/8 | 4/8 | 4/8 |
ベースクロック | 2.1GHz | 2.3GHz | 3.2GHz |
ターボクロック | 3.7GHz | 4.0GHz | 3.6GHz |
L3キャッシュ | 4MB | 4MB | 4MB |
対応メモリ | DDR-2400 | DDR-2400 | DDR4-3200 |
内蔵グラフィックス | Radeon Vega 8 | Radeon Vega 10 | Radeon Vega 8 |
グラフィック周波数 | 1200 MHz | 1400 MHz | 1100 MHz |
TDP | 35W | 35W | 45W |
発売日 | 2019年1月7日 | 2019年1月7日 | 2018年9月10日 |
搭載PC価格 | 78,623円~ | 109,000円~ | - |
Ryzen 5 2600Hはベースクロックが3.2 GHzと高いのが特徴です。Ryzen 5 2600Hの方が消費電力が高いのはアーキテクチャの問題もあるでしょう。マルチスレッド性能についてはアーキテクチャの新しいRyzen 5 3550Hが上回っています。単コアの性能はRyzen 5 2600Hの方が高いです。実はRyzen 5 3550Hでは対応メモリがDDR4-3200からDDR4-2400へとダウングレードされていますね。コストや消費電力を抑えるためかもしれません。異例とも言えます。内蔵グラフィックスについては同じRadeon Vega 8ですが、グラフィック周波数が100MHzだけ引き上げられています。
上位のRyzen 7 3750Hとは同じアーキテクチャとなっています。異なるのはクロック周波数です。ベースクロック周波数が0.2GHzアップ、ターボクロック周波数が0.3GHzアップしています。この差分の10%がそのまま性能差になっていると考えて良いですね。価格を考えるとパフォーマンス面での伸びは大きくありません。内蔵グラフィックスはRadeon Vega 10へと強化されています。対応メモリはDDR4-2400と共通です。消費電力についてはRyzen 5 3550Hと同じく35Wに抑えられています。
Intel製CPUと比較
Ryzen 5 3550H | Core i5-9300H | |
---|---|---|
コードネーム | Zen + | Coffee Lake-R |
プロセス | 12nm | 14nm++ |
トランジスタ数 | 49.4億 | - |
ダイサイズ | 210 mm² | 149 mm² |
コア/スレッド | 4/8 | 4/8 |
ベースクロック | 2.1GHz | 2.4GHz |
ターボクロック | 3.7GHz | 4.1GHz |
L3キャッシュ | 4MB | 8MB |
対応メモリ | DDR-2400 | DDR4-2666 |
内蔵グラフィックス | Radeon Vega 8 | UHD Graphics 630 |
TDP | 35W | 45W |
発売日 | 2019年1月7日 | 2019年4月22日 |
単体価格 | - | $250 |
搭載PC価格 | 78,623円~ | 99,980円~ |
アーキテクチャが異なるため、純粋なスペックの比較は正確とは言えないかもしれません。しかし、総合性能を見るとほぼこのスペック通りでCore i5-9300Hが大きく上回っていることがわかります。ゲームプレイや動画編集など負荷の高い作業にも対応しやすくなります。
対応メモリはCore i5-9300Hの方が上位規格のDDR4-2666に対応しています。内蔵グラフィックスはRadeon Vega 8の方が優勢です。もっともグラフィックボード搭載が標準なのでそれほど重視しなくても良いでしょう。TDPはCore i5-9300Hの方が30%高いです。Core i5-9300Hの単体価格は$250です。搭載PCの価格設定を見る限り単体価格はRyzen 5 3550Hの方が安いのではないかと思います。
Ryzen 5 3550HってどんなCPUなの?
モバイル向けミドルクラスとしてまずまずな性能を持つ
Ryzen 5 3500Hは、モバイル向けのモデルとしてはそこそこの性能を持つCPUです。第一世代のRyzen 5 2600H(6コア12スレッドと50%も上回る)よりも性能が伸びたのはさすがです。製品の種別としてRyzen 5 3550Hよりも上の600番台に勝ったのはアーキテクチャの進化のおかげでしょう。
競合のCore i5-9300Hには及ばないながらゲーミングノートPC搭載CPUとしてもある程度通用するモデルだと言えます。Core i5-9300Hの場合グラフィックボード非搭載モデルはありませんが、Ryzen 5 3500Hはグラフィックボード非搭載モデルも販売されていて価格を抑えることができます。それはAPUの性能がIntel UHDグラフィックス(CPU内蔵グラフィックス)より高く用途によっては十分対応できるからです。
アーキテクチャは一世代前でやや古い
Ryzen 5 3550Hでは、アーキテクチャにZen +が採用されています。このアーキテクチャは少し古くデメリットだと言えるかもしれません。Zen +は、デスクトップ向けCPU「Ryzen 2000シリーズ」と同じアーキテクチャです。つまり、モバイル向けの現行モデルであるRyzen 5 3550Hは一世代前のものということになります。デスクトップ向けのCPUが出てワンテンポ遅れてモバイル向けが登場する流れのため仕方ないですが…
現行のデスクトップ向けRyzen 3000シリーズではさらに進化したアーキテクチャである「Zen 2」が採用されています。CPUの要とも言えるIPC(Instructions Per Cycle)が改善したことでゲーミング性能を含めて総合力が飛躍的に高められています。
このRyzen 3000シリーズ(Zen 2)の登場は、市場でのAMDの存在をより大きくしました。事実国内のBTOメーカーを含む各ショップからこれまで以上に搭載モデルが増えています。このZen 2を採用したモバイル向け第三世代Ryzen 4000Hシリーズが、2020年夏までに登場する予定です。当然性能向上を見込めることから期待が持てます。
当初よりラインナップは減少している
Ryzen 5 3550Hが登場した2019年には多くのBTOノートパソコンが販売されどのモデルが選ぶべきか悩むほどでした。2020年になって状況が変わり、搭載モデルが激減しています。Intel製CPUと比べてパフォーマンス面で見劣りしてしまうのが響いているのかもしれません。
2020年4月の時点で搭載モデルは国内外のメーカーを合わせて二種類のみ(LenovoとHP)です。もう少し前であればASUSなどでも販売されていました。Ryzen 4000シリーズの発売を控えていることからメーカーも在庫を抱えておらず待っている状態でしょう。
ただし、ラインナップが減少しているとは言え魅力的なCPUであることに変わりありません。価格面で優位性を見出せるのであれば今選択しても良いと思います。少しぐらい高くても新しいモデルが良いという方はRyzen 4000シリーズが登場するのを待つと良いでしょう。
Ryzen 5 3550Hのベンチマーク
Cinebench R20
Ryzen 5 330Hは、Ryzen 5 2600Hよりもマルチスレッド性能が3%程度伸びています。一方でシングルスレッド性能は7%劣ります。これはRyzen 5 2600Hのベースクロック周波数が50%大きいことに起因します。それでもマルチスレッド性能が上回っているのはアーキテクチャの進化の結果でしょう。
Core i5-9300Hの性能の高さが伺えます。Ryzen 5 3550Hよりも13%程度マルチスレッド性能/シングルスレッド性能が高いです。同じコア数及びスレッド数でもアーキテクチャの差が出たということです。モバイル向けCPUはIntelが圧倒している状況です。次世代CPUの登場が待たれます。
Fire Strike Graphics
Ryzen APUの性能の高さが光ります。CPU性能では遅れをとっていますが3Dグラフィックス性能は優れていると言えます。この性能があるがゆえにグラフィックボード非搭載モデルにして搭載モデルの価格を抑えることが可能になっています。
Ryzen 5 3550H搭載のおすすめBTOパソコン
Lenovo IdeaPad S540 – ライトシルバー(Lenovo)
液晶サイズ:13.3インチ
価格:137,280円 86,486円(送料・税込み)
CPU:Ryzen 5 3550H
GPU:Radeon Vega 8 Graphics
メモリ:DDR4 8GB
SSD:256GB
HDD:非搭載
Pavilion Gaming 15 スタンダードプラスモデル(HP)
液晶サイズ:15.6インチ
価格:114,800円 90,900円
CPU:Ryzen 5 3550H
GPU:GeForce GTX 1650
メモリ:DDR4 8GB
SSD:128GB
HDD:1TB
当記事のまとめ
当記事では、モバイル向け第二世代Ryzen 5 3550Hの性能スペック及び搭載BTOパソコンについて紹介しました。省電力モデルのRyzen 7 3700Uや前世代のRyzen 5 2600Hよりも高いCPUパフォーマンスを発揮するCPUです。モバイル向けのRyzenも着実に進化しると言えます。一方で、未だ前世代のZen +を搭載していてアーキテクチャ的に少し時代遅れになっている感は否めずRyzen 4000シリーズの登場が期待されます。
現在Ryzen 5 3550H搭載のBTOノートパソコンは二種類です。一つがLenovoのビジネス向けモデル「IdeaPad S540」です。AMD自慢のAPUを活かしてコストダウンが図られています。価格を抑えたい方におすすめです。もう一つがHPのゲーミングノートPC「Pavilion Gaming 15 スタンダードプラスモデル」です。Turing世代のエントリークラスであるGTX 1650を搭載していてRyzen 5 3550Hとのバランスも良いですね。価格が抑えられていてコストパフォーマンスは良好です。
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