当記事では、NVIDIAが販売するプロフェッショナル向けグラフィックボードについて紹介しています。一般的にグラフィックボードというと一般消費者向けのGeForceを指していることが多いです。同じNVIDIAの一般向けグラフィックボードである「GeForceシリーズ」に関する情報はたくさんあります。
一方で、「NVIDIA RTX/NVIDIA Tシリーズ(旧Quadro)」に関する情報はほとんどありません。現行のAmpere世代のモデルから”Quadro”という名称が消滅しています。NVIDIA RTXシリーズ及びNVIDIA Tシリーズに統一されています。
このプロフェッショナル向けグラフィックボードはそもそも利用者が圧倒的に少なく一般向けではないので、情報が少ないことは仕方がないでしょう。3D CAD・ゲーム開発・動画編集・イラスト制作などを専門的に行っている方を対象としています。このマイナーなグラフィックボードについて、ここではできる限り詳しく解説していきます。
目次
プロフェッショナル向けグラフィックボードの概要
プロフェッショナル向けグラフィックボードの概要について見ていきましょう。上記はマウスコンピューターのクリエイター向けブランド「DAIV」のラインナップです。DAIVのラインナップ的にはNVIDIA RTX A6000・NVIDIA RTX A5500・NVIDIA RTX A4500・NVIDIA RTX A2000・NVIDIA T1000・NVIDIA T400となります。
用途としては、デザイン/CAD設計、3DCG制作/CAD制作、映像制作/3DCG制作/VR制作、高負荷クリエイティブ作業用、高負荷の映像制作/3DCG制作、超高負荷クリエイティブ作業、レイトレーシング/大規模開発環境などが該当します。その他DCC(Digital Contents Creation)・3D医療画像解析・地球科学・CAE(Computer Aided Engineering)・フォトリアリスティックレンダリング・8K動画編集・ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)などが挙げられます。
端的に言うとNVIDIA RTXシリーズなどはクリエイター向けのグラフィックボードです。3D CAD・ゲーム開発・動画編集・イラスト制作など特定のソフトウェアに強いグラフィックボードとなっています。上位モデルになるとより大規模な作業にも対応することが可能です。ただし、ゲームプレイには不向きです。ゲーム自体できないことはありませんが、コストパフォーマンスの観点から現実的ではありません。
3D CADやゲーム開発向けソフト自体具体的にどのようなソフトなのかわからない方がほとんどだと思います。各BTOメーカーのメインラインナップにもほとんどありません。これはほとんどの消費者にとって必要なグラフィックボードではないためです。ただ、最近はマウスコンピューターを始めとして多くのBTOメーカーがプロフェッショナル向けグラフィックボードを搭載したラインナップにも力を入れるようになっています。例えば、マウスコンピューターのクリエイター向けPCブランド「DAIV」は多くのクリエイターに支持されています。
プロフェッショナル向けグラフィックボード製品一覧
- NVIDIA A6000
- NVIDIA A5500
- NVIDIA A5000
- NVIDIA A4500
- NVIDIA A4000
- NVIDIA A2000 12GB
- NVIDIA A2000 6GB
- NVIDIA T1000 8GB
- NVIDIA T1000 HDMI
- NVIDIA T1000 4GB
- NVIDIA T600
- NVIDIA T400 4GB
- NVIDIA T400 2GB
基本的に数値が大きい方が高性能となります。RTXシリーズはRTコアやTensorコアを採用していてより専門的な作業を得意としています。参考までにフラグシップモデルであるNVIDIA A6000は単体で60万円オーバーとなっています。個人で購入するものではありませんね。大規模なCADモデル・CAE・複雑なエフェクト・3D医療画像検査などを行う方向けです。
フリーランスや自宅で作業を行う方にはNVIDIA A2000やNVIDIA T1000が人気です。エントリークラスはNVIDIA T600となります。NVIDIA T400もありますがこれぐらいの性能ならGeForceを選択した方が良いかもしれません。2021年にAmpere世代の新しい業務用グラフィックボードが登場してQuadroの文言がなくなりました。NVIDIA A6000・NVIDIA A5000といった形でNVIDIAという名称が付与されています。
基本的にはQuadro時代の数値がそのまま後継モデルとしてリリースされている形です。便宜上当サイトではQuadroという製品名でも呼ぶことにします。下記の関連記事ではGeForceはもちろんQuadro製のグラフィックボードについて性能比較をしています。用途ごとにおすすめのグラフィックボードをピックアップしていますので、ぜひ参考にしてくださいね。
製品ごとの用途目安
価格帯 | 用途 | |
---|---|---|
NVIDIA RTX A6000 | 650,000円~ | ハイパフォーマンス・コンピューティング CAE フォトリアリスティックレンダリング 地球科学 ディープラーニング VR GPGPU リアルタイムレイトレーシング |
NVIDIA RTX A5000 | 300,000円~ | 巨大な3D CADモデル CAE フォトリアリスティックレンダリング 地球科学 8K動画編集 VR GPGPU リアルタイムレイトレーシング |
NVIDIA RTX A4000 | 140,000円~ | 複雑な3D CADモデル DCC 3D医療画像解析 VR 地球科学 リアルタイムレイトレーシング |
NVIDIA RTX A2000 | 85,000円~ | 高度な3D CADモデル DCC 医療画像解析 VR リアルタイムレイトレーシング |
NVIDIA T1000 | 48,000円~ | 3D CADモデル DCC 医療画像解析 BIM |
NVIDIA T600/T400 | 17,000円~ | 2D CADモデル 動画編集 製品ライフサイクル管理 |
プロフェッショナル向けグラフィックボードの特徴&強み
クリエイター用ソフトウェアと相性が良い
画像引用元:https://www.adobe.com/
NVIDIA RTX/NVIDIA Tシリーズはクリエイター向けのソフトウェアと相性が良いのが最大の特徴です。正確にはOpenGLに最適化されているため同APIに対応したソフトウェアに強くなっています。そしてそのOpenGLに対応したソフトのほとんどが業務で使用するソフトウェアとなっています。また、ドライバーについても各ソフトウェアメーカーとの共同開発でメーカーから認証を受けています。対応例をまとめていますので参考にしてくださいね。
最適化されたソフトウェア例
- Adobe After Effects
- Adobe Photoshop
- Adobe Premiere Pro
- Autodesk AutoCAD
- Autodesk Maya
- Blender
- Sony Vegas Pro 13
10bitカラー出力に対応している
NVIDIA RTX/NVIDIA Tシリーズのグラフィックボードは10bit表示に対応しています。約10億6433万色という膨大な色数を表現することができます。より高度でプロフェッショナル向けのデータ加工や編集を行えます。NVIDIA RTX/NVIDIA Tシリーズが、クオリティを求めるプロの方に支持されている理由です。写真のRAWデータをより忠実にモニターに映し出すことができます。この機能を最大限生かすには10bitに対応した高価なモニター(マスターモニターやカラーグレーディング用モニター)が必要です。
2019年7月にNVIDIAが、GeForce製グラフィックボードでも10bit表示ができるようになったと発表(NVIDIA, 2019)しました。RGB各色10bit(合計30bit)となります。つまり、記事内で言及されている30bit対応=10bitカラー出力と考えて問題ありません。このアップデートによって10bitカラー出力ができるというのはNVIDIA RTX/NVIDIA Tシリーズだけの強みではなくなりました。
NVIDIA RTX/NVIDIA Tシリーズ独自の特別な機能を持つ
画像引用元:https://www.adobe.com/
NVIDIA RTX/NVIDIA Tシリーズはプロフェッショナル向けのグラフィックボードということでGeForceにはない独自の機能を持っています。例えば、Photoshopにおけるエフェクト(ブラー・液状化)、AutoCADにおけるスムーズライン機能によるアンチエイリアスやConceptualや3D Hiddenのパフォーマンス向上、Shadeでの描写性能のアップが見込めます。3D CAD、3DCG制作などに強みを発揮するグラフィックボードだと言えます。
GeForce製グラフィックボードからの買い替えで性能差を体感できるでしょう。実は純粋なグラフィックボードの性能だけを見るとGeForceの方が高いです。スペック的にも同じ価格で比較するとGeForceのほうがグラフィックボードの性能を示すクロック周波数が高いです。NVIDIA RTX/NVIDIA Tシリーズは、GeForceにはない機能を持っていることから専門的な用途で活用されることが多いということです。
3年間の長期保証
国内の正規販売代理店である「ELSA」からNVIDIA RTX/NVIDIA Tシリーズを購入すると3年間の保証を受けられます。GeForceの場合各ベンダーごとに保証内容は異なります。一方で、NVIDIA RTX/NVIDIA Tシリーズは実質NVIDIAのみが製造・販売を担っています。そのためNVIDIA側で品質の担保ができるということです。安心して長く使用することができるのは魅力的ですね。特に仕事で使用する方にとっては重要なポイントだと思います。
NVIDIA RTX/NVIDIA TとGeForceの違いまとめ
NVIDIA RTX NVIDIA T | GeForce | |
---|---|---|
API | OpenGL | DirectX |
用途 | 3D CAD | ゲーム |
販売会社 | NVIDIAのみ | MSI、ASUSなど多数 |
bit数 | RGB各色10bit | RGB各色10bit |
複数モニター | 最大8画面 | 最大3画面 |
もう一つ大きな違いとして開発・販売メーカーです。NVIDIA RTX/NVIDIA Tは基本的にNVIDIAが製品の製造・供給を行っています。国内の正規販売代理店は株式会社エルザジャパンのみです。一方、GeForceの場合は規格などはNVIDIAが担いますが、実際の製造は各ベンダーが行う形になります。そのためユーザーは同じ型番(RTX 3080 etc.)でも異なるメーカーの製品から選択することができます。
次にNVIDIA RTX/NVIDIA T最大の特徴としては10bitカラー出力に対応していることが挙げられます。GeForceは8bitカラーでNVIDIA RTX/NVIDIA Tの方がより細かい色の描写が可能となります。これは印刷物の作成などをするプロフェッショナルの方向けだと言えます。専用のモニターを利用することでより鮮明でリアルな画像を映し出せ、業務のパフォーマンスが向上します。その後GeForceでも10bit出力対応となりました。
最後に複数モニターについてNVIDIA RTX/NVIDIA Tは最大8画面、8K解像度に対応しています。これは主にグラフィックスを扱うクリエイターの方をターゲットにしているからこその機能です。GeForceは最大3画面までのサポートとなっています。
補足:FirePro
NVIDIA RTX/NVIDIA Tの対抗製品として、AMDが販売するFireProもあります。ゲーム向けのGeForceとRadeonの関係と同じですね。ただ、FireProに関してはBTOメーカーから積極的に販売されていないため当サイトでは取り扱わない予定です。どうしてもFireProを選択したい方はAmazonなどから購入する必要があります。
NVIDIA RTX/NVIDIA Tシリーズ搭載の人気BTOパソコンを紹介
raytrek LC-M(ドスパラ)
価格:154,980円(税込)
CPU:Core i7-12700
GPU:NVIDIA T600
メモリ:DDR-3200 16GB
SSD:500GB NVMe
HDD:非搭載
SENSE-S06M-127-NLX(パソコン工房)
価格:251,700円(税込)
CPU:Core i7-12700
GPU:NVIDIA RTX A2000
メモリ:DDR4-3200 16GB
SSD:500GB NVMe
HDD:非搭載
DAIV Z7-T1(マウスコンピューター)
価格:264,800円(税込)
CPU:Core i7-12700
GPU:NVIDIA T1000
メモリ:DDR4-3200 32GB
SSD:512GB NVMe
HDD:2TB
SENSE-F069-LC127K-NNX(パソコン工房)
価格:333,980円(税込)
CPU:Core i7-12700K
GPU:NVIDIA RTX A4500
メモリ:DDR4-3200 32GB
SSD:1TB NVMe
HDD:非搭載
当記事のまとめ
当記事では、業務用グラフィックボードNVIDIA RTX Aシリーズ/NVIDIA Tシリーズ(旧Quadro)について詳しく解説しました。プロフェッショナル向けのグラフィックボードは、主に3D CADやPhotoshopなどクリエイター向けのソフトウェアを使用する方がターゲットのグラフィックボードだと言えます。ゲーム向けとして購入するとなるとコスパが悪くおすすめしません。
GeForceと比べると高価ですが、10bit出力・最大8画面モニター対応など独自の強みがあります。また、保証も手厚くプロフェッショナルの方に支持されています。気になることやご不明点があればコメント欄かお問い合わせフォームよりご連絡いただければと思います。
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